着付けの技術よりも着物を購入したかどうかが優先される理由
例えば、スイミングスクールの場合、クロールができるようになれば、次のクラスへ進級し、平泳ぎができるようになれば、さらに上のクラスへ進級することが可能です。
つまり、生徒の習熟度に応じてクラスが分けられ、泳ぐ技術が上達すれば、次のクラスへ進級できる仕組みになっています。
しかし、着付け教室の場合、技術の習熟度よりも、「その教室で着物や帯を買ったかどうか」が進級の条件として優先される教室もあるようです。
商品を買うことを進級の条件にするのは習い事としては特殊な事例
通常、進級できるかどうかの基準としては、小学校のように1年間通えば次の学年に進級できるような、出席回数や日数、年齢を進級の条件とするものや、スイミングスクールのように技術レベルや成績が一定の水準に達しているかどうかが進級の条件になるものが一般的であり、商品を買うことを進級の条件にするのは習い事としては特殊な事例かもしれません。
では、その着付け教室の場合、なぜ「教室で着物や帯を買ったかどうか」という特殊な条件を進級の基準となっているのでしょうか?(もちろん、そのような基準を生徒に公表していることはありません)
それは、「教えること」ではなく「販売すること」がその着付け教室の目的となっているからです。
着付け教室にもいろいろな種類の教室がありますが、無料の着付け教室やワンコインの着付け教室の場合、通常、授業料だけでは採算が合いません。
無料で集客し、集めた生徒に着物を押し売りすることが目的
それでは、なぜ無料で着付け教室を開催しているかというと、一部の悪質な着付け教室の場合、無料や極端に安い価格で集客し、集めた生徒に着物を押し売りすることを目的としているからです。(国民生活センターのホームページにも「無料商法」という言葉で悪質な着付け教室の事例が紹介されています)
そのような着付け教室では、着物を買ってくれる生徒=優良顧客となりますが、着物を買ってくれない生徒は運営側にとっては採算が合わない生徒なので、いつまでも教室に通われるよりは、早く辞めてもらったほうが都合がよいというわけです。
つまり、きものを買ってくれる人は会社の利益になるため、進級してほしいが、買わない人は赤字になるため、進級しないでほしいというのが、そのような着付け教室の本音ではないでしょうか?
「無料=お得」だと安易に判断してしまう前に、運営側の立場になって、なぜ無料になっているのか、なぜワンコインで教えてもらえるのか?と冷静になって考えてみる必要があるように思います。