ホームページやチラシに「押し売りはしない」と書いてあれば安心!?
着付け教室での押し売りは国民生活センターにも多くの相談が寄せられているトラブル事例です。
事前に「売り込みはしない」との説明があったのに・・・
以下の相談事例では、事前に「売り込みはしない」と言っていたにもかかわらず、数時間も複数の店員に囲まれて押し売りをされています。
タウン誌で無料の着物着付教室の広告を見て応募した。手持ちの着物で受講でき、希望すれば着物を購入することもできるが売り込みはしない、無料で受講できるのは全国の織物組合や企業の後援・協賛金で運営しているため、との説明であった。
引用元:強引に帯を買わされた無料の着物着付け教室(国民生活センター)
http://www.kokusen.go.jp/jirei/data/200412_1.html
無料とうたって結局何かを買わせる「無料商法」
このように、無料とうたって結局何かを買わせる商法は「無料商法」と呼ばれており、エステや化粧品、浄水器や掃除機などでも問題になっている販売手法です。
無料であること自体に違法性はありませんが、「無料」という言葉で巧みに勧誘し、高額な商品やサービスを売り付けられることがあり、問題となっています。
着付け教室で押し売りが起こってしまう「からくり」とは?
上記の事例のように、「売り込みはしない」と言っていたにもかかわらず、押し売りが起こるのには「からくり」=構造的な理由があります。
「なぜ着付け教室が無料なのか?」を考える
通常、着付け教室を開催するためには、場所代(家賃)、講師の人件費、集客のための広告宣伝費などの経費がかかります。
では、その費用を負担しているのはいったい誰なのでしょうか?
メーカーや卸問屋が着付け教室にかかる経費を負担している
上記の相談事例では、「無料で受講できるのは全国の織物組合や企業の後援・協賛金で運営しているため」とあります。
それでは、なぜ織物組合やメーカー、卸問屋などがお金を出しているのでしょうか?
それは、無料でたくさんの生徒を集めてもらい、その生徒に着物や帯を販売するためです。
「負担した経費を回収しなければならない」というビジネスモデル
着付け教室を開催する経費を負担したメーカーや問屋は、その費用を回収しなければ赤字になってしまいます。
しかし、企業としては赤字は極力避けなければなりません。
その費用を回収するために、経費を負担したメーカーや問屋には販売目標があり、赤字を避けるために最低限必要な売上(=ノルマ)が存在します。
販売目標やノルマが販売員の押し売りへとつながっていく
つまり、赤字を避けるために「なんとしても売らなければならない」という圧力が販売員にはかかり、それが行き過ぎたときに「押し売り」へと発展してしまうのです。
押し売りが起こりやすいのは避けがたい構造的な問題
販売員は決して悪質なことをしたいわけではないと思いますが、負担した経費を回収しなければならないというプレッシャーが結果的に押し売りを招くというところに構造的な問題があると考えています。
「売り込みはしない」という事前の説明が守られなかった理由
上記の事例はもちろん、どんな着付け教室も最初は「押し売りはありません」と説明すると思います。
しかし、着付け教室にかかる経費をメーカーや問屋が負担している以上、売り手は赤字を避けるためにはなんとしても売らなければなりません。
ホームページやチラシに「押し売りはしない」という言葉があったとしても、着付け教室の先生が優しそうであったとしても、無料で着付け教室に通うためには、裏側にこのような仕組みがあるということを消費者は理解しておかなければなりません。